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  • 平鍋健児

企業内イノベーションの実現に向けた7つの提言(その2)

デジタルビジネスに活かすアジャイル開発(第6回)


これまで、DXイノベーション、アジャイル、そして日本のビジネス構造欠陥の話から、「7つの提言」としてあたらしいビジネスづくりと、開発のあり方について書いてきた。


バックナンバー

第1回「イノベーション創出では企画と開発を分離してはいけない

第2回「開発手法だった「アジャイル」はビジネス手法に進化した

第3回「ビジネスに追いつけない日本式システム開発の構造欠陥

第4回「変化し始めた日本式システム開発〜DXの波の到来とアジャイルの台頭

第5回「企業内イノベーションの実現に向けた7つの提言(その1)


その7つの提言は以下だ。

  1. 経営陣がアジャイルを理解し、企業文化を醸成すること

  2. 既存の情報システム部門と別に、イノベーション部隊を建設すること

  3. イノベーション部隊を既存の進捗管理から切り離し、企画と開発を一体化すること

  4. アジャイル開発の教育を行い、徐々に経験者をふやすこと

  5. 経験のあるアジャイルコーチ、スクラムマスターを招き入れる、もしくは採用すること

  6. 技術力のあるエンジニアを招集すること

  7. 技術コミュニティへのエンジニア参加を推奨し、外部交流を行うこと

前回は、この1〜3について述べたが、今回は、4〜7について詳説したい。


(4)アジャイル開発の教育を行い、徐々に経験者をふやすこと


まずはチームにアジャイルの教育を行う。できれば、すでに社内のアジャイル開発経験者を中心に、社内勉強会を始めるのがよいだろう。アジャイル実践者には強いモチベーションを持っている人が多い。その人を中心にしてチームを育てよう。また、いない場合や、いても教育を加速させたいときのために、外部の教育サービスを利用することもできる。最近、アジャイル教育のサービスを行っている会社が日本でも多く出てきた。そこに教育を手伝ってもらう。特に、スクラムの教育は多くの会社が行なっているし、認定制度なども存在する。


ただし、「唯一の正しい」アジャイル開発があるわけではないことに注意したい。自分の会社に合ったやり方が、自社のビジネスや文化から自然と育っていくのがアジャイル開発の本質である。基本的なことを外部から学んだら、自社で自走するように、あとは自社内にコーチを作って、社内に実践者をオーガニックに増やしていくことが必要だ。


草の根の会でもよいが、経営がそこに予算とモチベーションを与えよう。勉強会やワークショップを会社の仕事として認めよう。食事を提供するのもよい。会社がその活動を支援していることを示すことが重要だ。


(5)経験のあるアジャイルコーチを招き入れる、もしくは採用すること


アジャイル開発の実践には、本を読んだり教育セミナーに参加したりするだけでは不十分だ。言葉では伝わらない「経験」がものをいう領域である。一度もアジャイル開発の経験がなければ、自信をもって「こうすべきだ」と言うことができない。本や文書にはこういったリアルタイムの質問できないが、コーチにはその場で質問できる。アジャイル経験者をコーチにしよう。もし、社内にアジャイル経験者がいなければ、外から来てもらおう。長期間の契約をする必要はない。最初にチームを作り、しばらく自力で走れるようになるまでは外部コーチを受け入れよう。採用を考えるのも、もちろんよい。


アジャイルのコーチングをサービスとして提供している会社もどんどん増えてきている。Webページやカタログベースでコーチを選ぶより、こういったコーチに実際に会える場、としてコミュニティがある。(7)でも触れるが、外部の優秀なコーチや教育者に出会うことが機会となる。


(6)技術力のあるエンジニアを招集すること


イノベーション部隊は内製であることが望ましいが、社内に十分な人数のソフトウエアエンジニアがいない場合もある。もし、デジタルイノベーション(DX)を標榜し、ソフトウエアを企業のコア資産だと考えるなら、ソフトウェアを「調達する」というモデルを見直す時期だ。特に、イノベーションは調達できない。ビジネスと一体になって活動する必要があるため、エンジニアの採用が急務だ。外部に一括発注してプロジェクトを管理しても、よいものはできない。仕様変更やスケジュール管理だけで多くの工数が取られてしまうし、目標が「計画通りに作ること」になった瞬間、イノベーションは起きなくなる。エンジニアが内部にいない場合、自社の情報システム子会社、関連会社、ソフトウエアベンダーなどから、技術力のあるエンジニアを招き入れることを考えよう。


外部の会社と協調する場合でも、「請負開発」でよく行われる、完成責任と瑕疵担保責任をともなう請負契約は不適当である。準委任契約によって、優秀な(経験ある)その特定分野のエンジニアを招き入れる。技術力があるエンジニアは、「人月」の一部として安く調達されたエンジニアの優に数倍の価値がある。


そのようなエンジニアを採用したり、契約したりするには、技術が分かり技術者を目利きできるCTO職が必要になるかもしれない。社内な優秀なエンジニアがCTOの候補だ。CTOに、採用とともに、モダンな開発環境やプラットフォームを扱えるエンジニアを育てる役割を持たせよう。


(7)コミュニティへのエンジニア参加を推奨し、外部交流を行うこと


社内エンジニア、もしくは外部から招き入れたエンジニアが確保でき、アジャイルを回せる人が出てきたら、そのエンジニアたちに外部コミュニティへの参加を推奨しよう。アジャイル開発は多くの文脈依存(市場・プロジェクト・プロダクト・文化)のノウハウが暗黙知として存在する。それを獲得するには、日本・海外の他のエンジニアたちとの交流が大いに役に立つ。小さくてもよいので、事例ができたら積極的に外部コミュニティで発表しよう。


アジャイルジャパンスクラムギャザリングは国内の大きなコミュニティであるが、それ以外にも多く外部からの発表を受け入れるカンファレンスや勉強会が存在する。チームは最初、悩みながら自分たちのチームを運営するだろう。そこには技術的な課題、マネジメント的な課題の両方が存在し、日々それらと直面することになる。政治的なこと、人事的なこと、予算的なことも含めたチーム作りの課題等、現実的な問題である。社内だけで解決することは難しい。解決のヒントの多くは社外に存在する。


ソフトウエアエンジニアの世界では伝統的にこういった技術交流の場が、会社という枠を超えて存在している。その中心にあるのは技術的な興味であり、情熱である。新しいことを突き進めるには、情熱が不可欠だ。


こういった場に頻繁に参加しているエンジニアは、新しい知識を外部から取り入れながら急速に成長し、社内でも活躍するようになるだろう。経営陣としては、このような活動への参加を本来業務ではないとして渋るのではなく、逆に推奨して参加させるべきだ。また、自らが出かけて行って、その熱量を確かめ、社内に招くコーチ、CTO、エンジニアの候補を探すこともできる。


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第1回「イノベーション創出では企画と開発を分離してはいけない

第2回「開発手法だった「アジャイル」はビジネス手法に進化した

第3回「ビジネスに追いつけない日本式システム開発の構造欠陥

第4回「変化し始めた日本式システム開発〜DXの波の到来とアジャイルの台頭

第5回「企業内イノベーションの実現に向けた7つの提言(その1)


アジャイルスタジオ福井では、実際にアジャイル開発を行なっている現場見学を受け入れています。ご興味があれば、こちらへどうぞ。




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