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  • 平鍋健児

変化し始めた日本式システム開発〜DXの波の到来とアジャイルの台頭

最終更新: 2019年6月4日

デジタルビジネスに活かすアジャイル開発(第4回)


前回、日本のいわゆるSIという事業領域において、これまで行われてきたユーザとベンダーによるソフトウェア開発手法が、日本の産業構造、時代的な背景、就労感などから現れて行きたこと、またその中で行われている「壮大な伝言ゲーム」について触れた。


バックナンバー

第1回「イノベーション創出では企画と開発を分離してはいけない

第2回「開発手法だった「アジャイル」はビジネス手法に進化した

第3回「ビジネスに追いつけない日本式システム開発の構造欠陥



ネットビジネス企業が先導したアジャイルの導入


SIer側もユーザー企業側も、このままでよいと考えているわけではない。日本のSIerの中には、2000年代初頭から草の根的にアジャイル開発に取り組むチームが存在している。筆者はオブジェクト倶楽部(オブジェクト指向開発周辺のコミュニティ、現オブラブ)XP-jp(アジャイル手法XPのコミュニティ)といった小さなコミュニティを2001年から運営しながら国内のエンジニアとの関係づくりをしてきた。その中には富士通、NEC、パナソニックといった大企業の中にいながら参加・実践に取り組んでいた方々もたくさんいる(第1の波)。


2009年から始まる事例発表コミュニティであるアジャイルジャパンでは、SIerの中でのアジャイルの事例が毎年発表されてきた。しかし、上記の産業構造と契約の壁に阻まれて、その成果はなかなかビジネスの表舞台に出てこなかった。


一方で、例えば楽天、Yahoo! Japan、GMO、リクルートの多くの子会社など、Webサービス、ネットビジネスを中核に成長する企業が増えてきている。いずれも、早くからアジャイル開発を取り入れたり、リーンスタートアップ型のプロジェクトを平行して走らせたりしながら、企画と開発の一体化を進めていた企業である(第2の波)。また、ビジネス資産としてのソフトウエア、技術的卓越性を大切にし、CTOを明示的に置いているのも特徴だ。


こうした動きが出てきたのは、インターネットをビジネスの中心にする企業が多くなったことが大きい。ユーザー企業とIT企業のどちらにも属さない、ネットビジネス企業が多く現れたことと軌を一にしている。


Webでのネットビジネスを中心とする小さなスタートアップの会社ではアジャイル開発がもはや当たり前となり、大きく成長しても既存資産と新規開発をどのように結びつけるか、を考えながら成長を描いている。2011年からはじまるカンファレンスである、スクラムギャザリング東京は、このような流れの中で立ち上がったコミュニティである。


こうして日本のアジャイル開発は、早くからデジタルビジネスをコアコンピタンスとして認識したネットビジネス企業の間で広がったと言える(ここではSIerは取り残された)。


その流れに伴い、Webビジネス企業へのエンジニア流動も起きている。ビジネスと直結した開発(自分たちの貢献が直接事業の成功に結びつくやりがい)を求めて転職する大手SIer出身のエンジニアが増えてきているのだ(図を参照)。


IT人材流動のイメージ図 (出所:『IT人材白書』 IPA 2014~「作る」から「創る」へ、「使う」から「活かす」へ~価値を生み出すプロの力~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~)

キャズムを超えた日本のアジャイル


さて、ここでようやく現在(2019)である。下の図の中で「3rd Wave」(第3の波)と描いた位置に私たちは立っている。デジタル革命が各産業を破壊しはじめた外的環境変化によって、日本でもアジャイルがビジネスに認知され、積極的に採り入れられるようになった。



アジャイル 3rd Wave の到来

前述の「エンジニア主体」の1st Wave、次のネットビジネス主体の2nd Waveが過ぎ、既存大企業もでも「DX」すなわちデジタル革命がキーワードになり、「攻めのIT」へとシフトする動きが活発化してきた。


現在は、ネットビジネス企業以外のユーザー企業がこのシフトの中心にある。SIerを使ってRFPベースのIT調達をしていた大企業の中でも、先進的な企業はこぞってデジタルシフトを考え始めた。


この波の中では、これまでの基幹システムの開発(SoR:Systems of Record)のやり方は通用しない。逆に言えば、SoR型の開発では上記の構造は残るのかもしれない。しかし、この連載で対象にしている「イノベーション」の世界では、「要求は定まらない」ものであり、作り上げるべきなのは、まだ世の中にない、ニーズが検証されていない新サービスである。この分野では企画と開発が一体となって考える、試行することが必要とされる


とはいっても、既存の文化、組織の中で、スタートアップのような活動を行うことはなかなか難しい。大企業の組織の壁としがらみの中で、どうすれば意思決定のスビードを上げ、試行と学習ループを素早く回すことができるのだろうか。


次回は、以上を踏まえて、既存大企業の中で新しい変革を行っていくための具体的な提言を行いたい。


バックナンバー

第1回「イノベーション創出では企画と開発を分離してはいけない

第2回「開発手法だった「アジャイル」はビジネス手法に進化した

第3回「ビジネスに追いつけない日本式システム開発の構造欠陥

アジャイルスタジオ福井では、実際にアジャイル開発を行なっている現場見学を受け入れています。ご興味があれば、こちらへからどうぞ。


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